聖女のいない国に、祝福は訪れない
「聖女ニセラ様。この度はご懐妊、誠におめでとうございます……」

 その姿に誰もが目を奪われていたが、ニセラとフェドクガだけは明らかに様子がおかしい。
 フリジアは畳み掛けるように流れるような動作で、ドレスの裾から両手を離すと妹へ語りかけた。

「私の命を奪って聖女に収まった気分は、いかがですか」
「な、なんの話ですかぁ? ニセラ、よくわかんなーい!」

 案の定、ニセラは姉の問いかけにすっとぼける。
 当然だ。二人きりならともかく、誰もが見ている前で偽聖女とバレるわけには行かないからだ。

(私から聖女の座を奪わなければ……黙ってあげたのに……)

 すべてを終わらせると決めたフリジアは、攻撃の手を休めるつもりなどなかった。

(反撃されるかもしれない……)

 ニセラの隣にはフェドクガがいる。
 彼から暴力を振るわれたらとフリジアは恐ろしかったが、彼女はセドリックと一緒だ。

(何があっても、絶対に大丈夫……)

 彼と絡めた腕に力を込めた彼女は、妹を見つめ微笑みを深める。
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