聖女のいない国に、祝福は訪れない
「そうですか。祝いの席に泥を塗るようで、恐縮ですが……」
「ひ……っ!」
「皇太子。何か私に、お伝えしたいことがあるのでは……?」

 フリジアの視線が皇太子へ向けられた瞬間――今までの威勢はどこへやら。
 フェドクガは喉を引き攣らせて後退りした。
 どうやらこの男は、本当に彼女が化けて出てきた幽霊だと思い込んでいるらしい。

(さすがは思い込みが激しく、すぐにカッとなる男……)

 フリジアは関心しながら、彼らを追い詰めていく。

「し、知らん! 私は、何も……!」
「言いたいことなど、ないと?」
「あるわけがないだろう!」
「では、私から申し上げさせていただきます……」

 フェドクガはプライドが高い男だ。
 自分がこのあとどのような目に合うかよりも、今この瞬間さえ乗り切ればいいと本気で思っているのだろう。
 フリジアはそんな彼の希望を断ち切るかのように、満面の笑みを浮かべたまま淡々と厶ガルデン王国での扱いを語った。
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