聖女のいない国に、祝福は訪れない
「陛下。聖女様のお召し替えを……」
「……そうだな。湯浴みを済ませてくるといい」
「承知いたしました」
女性は恭しく頭を下げると、ベッドに横たわっていたフリジアに優しく手を差し伸べる。
「立てますか? 難しいようでしたら、陛下に……」
手を何度かグーパーと開いて閉じてを繰り返した彼女は、手の感覚に異常がないことを確認してから布団を剥ぐ。
(あ、れ……? 握力、衰えちゃったのかな……)
一生懸命自分の身体から退けようとしているのだが、どうにもうまく捲り切れない。
フリジアは結局下半身をズルズルと引き摺ることでどうにか布団から抜け出ると、生まれたての子鹿のように両足を震わせながらベッドを降りた。
「危なっかしくて、見てられんな」
彼女が床の上に立ったあと。
一歩一歩踏みしめ歩く姿を目にしたセドリックは、このままでは転倒して大怪我をするのではと危惧したのだろう。
フリジアを軽々と抱き上げた彼は、迷いのない動作で後方に先程の女性を従い水場を目指す。
「……そうだな。湯浴みを済ませてくるといい」
「承知いたしました」
女性は恭しく頭を下げると、ベッドに横たわっていたフリジアに優しく手を差し伸べる。
「立てますか? 難しいようでしたら、陛下に……」
手を何度かグーパーと開いて閉じてを繰り返した彼女は、手の感覚に異常がないことを確認してから布団を剥ぐ。
(あ、れ……? 握力、衰えちゃったのかな……)
一生懸命自分の身体から退けようとしているのだが、どうにもうまく捲り切れない。
フリジアは結局下半身をズルズルと引き摺ることでどうにか布団から抜け出ると、生まれたての子鹿のように両足を震わせながらベッドを降りた。
「危なっかしくて、見てられんな」
彼女が床の上に立ったあと。
一歩一歩踏みしめ歩く姿を目にしたセドリックは、このままでは転倒して大怪我をするのではと危惧したのだろう。
フリジアを軽々と抱き上げた彼は、迷いのない動作で後方に先程の女性を従い水場を目指す。