聖女のいない国に、祝福は訪れない
「来い」

 ここに来てから一度も口を開かなかったセドリックが、動物達を呼び寄せた。
 ハミングバード、狼、うさぎ――。
 フリジアを愛する獣達は、姿を見せた瞬間彼女の元へとやってくる。
 ニセラの元へは、一匹も寄り添わない。

「動物達が、アーデンフォルカ帝国の皇帝がエスコートしている女性に懐いているわ……」
「聖女ニセラが偽物と言うのは、本当なのか?」
「癒やしの力を確認しないと……」
「フ、フリジア! 待って! なんでこんなことするんですかぁ!」
「――私がやめてと言っても、あなたは止めなかった。自分だけ助かろうとするなど……虫がいい話だと思いませんか」

 静かな怒りの炎をその瞳に称えたフリジアは、折りたたみナイフによってつけられたセドリックの切り傷を癒やしの力で綺麗サッパリ元通りにしてみせた。

「癒やしの力を使ったぞ!」
「動物達にも愛されている……! 彼女こそ真の聖女だ!」
「がう!」
「ルピィ!」

 貴族達はフリジアこそが真の聖女だと手のひらを返し、近寄ろうとする。
 そんな悪しきものから聖女を守るため、動物達が立ちはだかる。
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