聖女のいない国に、祝福は訪れない
「フリジア」

 夜会の参加者達はあっと言う間に制圧された。

(さすがは戦争慣れしている皇帝……)

 彼はぼんやりと羨望の眼差しを向けるフリジアと不思議そうに目線を合わせると、剣を鞘に収納してから彼女を抱き上げる。

「気は済んだか」
「……はい。充分すぎるほどに……」

 心が晴れやかな気分とまでは行かないが、肩の荷が降りたのは間違いない。

(手足の自由を奪われ、苦しみの中で永遠に苦しめばいい。命を奪われた方がよかったと後悔するほどに……)

 フリジアは彼の腕に身を預け、ゆっくりと目を閉じ――厶ガルデン王国をあとにした。
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