聖女のいない国に、祝福は訪れない
「俺達は遠くから、見守っていればいい」

 彼女を傷つけたことを深く反省した者達とともに力を合わせて花弁が美しく花開いた時こそが、あの地に祝福を齎すべき瞬間だ。

「……ありがとう、ございます……」
「気にするな」

 フリジアは肩の荷が下りたからだろうか。
 あれからよく、笑うようになった。
 暇さえあれば民と言葉を交わし、動物達と一緒に駆け回る。
 そんな姿を遠くからセドリックが見ていることに気づき、彼女は首を傾げた。

(なんだか最近、陛下と距離ができたような……)

 フリジアは愕然とする。なぜならば、その理由は明らかだったからだ。

(あまりにも醜い復讐心を抱いていたことが明らかになり、嫌われてしまったのでは……?)

 これは大変だと、彼女は大慌てでセドリックに声をかけた。

「ち、違うのです……!」

 なんの説明もなく否定の言葉を叫ばれたところで、どう反応していいのかわからなかったのだろう。
 彼は不思議そうに目を細め、彼女と目線を合わせた。
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