聖女のいない国に、祝福は訪れない
「どうした?」
「私は、陛下に嫌われたら……! 生きていけません……!」

 顔を真っ赤にして懇願するフリジアの姿を目にした彼は、彼女を安心させるように優しく微笑む。

「ああ。知っている」

 彼はフリジアを抱きしめると、愛おしそうに髪を梳く。
 彼女がドキドキと昂る心臓の鼓動を抑えきれずに目を白黒させていれば、セドリックが耳元で囁く。

「フリジアは、俺のことが大好きだからな……」
「……っ!」

 フリジアはパッと、勢いよく彼を見上げた。

 彼女が背伸びをするか、彼が身を屈めれば唇が触れ合う距離にいると気づいたフリジアは、何度も口を動かして驚いている。

「違うのか?」
「えっと、それは。その……」

 彼から問いかけられたことで、セドリックから想いを告げられた際に彼女は答えを先延ばしにしていたと思い出す。

(ここで誤魔化したら、きっと後悔する……)

 フリジアは咄嗟に拒絶してそうになった気持ちをぐっと堪えると、瞳を潤ませて彼に告げた。
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