聖女のいない国に、祝福は訪れない
「これより、尋問を執り行う」

 ベッドの上で上半身だけを起こした彼女は、手足の自由を奪われることなく椅子に座ったセドリックの質問へ答える。

「名前は」
「フリジア・リエルルと申します」
「俺は二十二だが、君は」
「……わかりません」
「先代聖女が亡くなってすぐ生まれたのであれば、君は十七歳のはずだが」
「……では、それで……」

 フリジアは光すらも差し込まない地下牢に長い間監禁されていた。

 一週間に一度食事を与えられていたことから、その回数を数えれば何年あの場所にいたかはわかるだろうが、二十回まで数えた所で馬鹿らしくなって記憶するのをやめてしまったのだ。

(もう、七年も経ったのか……)

 十歳で聖女だと任命されて親元から引き離されたフリジアは、七年も聖女として過ごしたことになる。

 十二歳のデビュタントまで、あと二年の所だった。

 公爵家の娘として華々しい社交界デビューを終えていたならば、あれほど酷い目には合わなかったかもしれない。
 そう思えば、絢爛豪華なドレスを身につけ社交場に出入りできなかったことが悔やまれる。
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