聖女のいない国に、祝福は訪れない
「なぜここにやってきた」
「わかりません……」
「何が目的だ」

 彼は曖昧な言葉を返すフリジアの口を割らせようと、睨みつけてきた。

(嘘をついたら、叩き斬られてしまいそう……)

 せっかく彼によって命を救われたのだ。
 恩を仇で返すようなことはするべきではないと考えた彼女は、素直に理由を説明する。

「私は、命を終えたかった……」

 フリジアの発言に、彼は訝しげな視線を向けた。
 やはり、信じてもらえなかったようだ。

 彼女が落胆の色を隠せず俯けば、彼はフリジアの言葉を受け入れられない理由を話し始めた。

「聖女とはつねに国民達の安寧を祈り、聖なる力を使役することが役目……」
「……はい……」
「君は神の愛し子だ。自ら命を投げ出すなど、あり得ない」

 セドリックの知識とフリジアの体験したことには、どうやら齟齬があるようだ。
 彼にとってあり得ないと吐き捨てられるような待遇を受けて来た彼女は、拳を握りしめてじっと耐える。
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