聖女のいない国に、祝福は訪れない
「君を捕虜として、拘束する」

 フリジアの腹部に鍛え抜かれた腕を回したセドリックは、勢いよく彼女を川から引き上げ抱き上げそう宣言した。

(私が……。陛下の捕虜に……)

 フリジアは果たして自分に捕虜としての価値はあるのだろうかと疑問に思ったが、ここで抵抗したところで苦しみが深まるだけだ。

(生きている限り、聖女と言う肩書きからは逃れられないのだから……)

 無言で全身から力を抜いた彼女は、彼の逞しい胸板に身体を預け、ゆっくりと目を瞑った。
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