聖女のいない国に、祝福は訪れない
悪夢と添い寝
(平和だ……)

 ふかふかのベッドの上で、窓から差し込む太陽の光を浴びて目覚める生活は、何度経験しても馴れない。

 母国にいた頃は二十四時間三百六十五日気の抜けない生活を送っていた。
 だがこの国に来てからフリジアは、今までの暮らしが嘘のように穏やかな気持ちで日々を過ごせるようになっていた。

「おはようございます。フリジア様」

 それもすべて、お喋りな侍女のおかげだ。

 口数少なく、自らの意志を声に出して告げない彼女を気にしているのだろう。
 セヌはフリジアの顔色を窺いながら、頻繁に話しかけてくれた。

 まるで彼女は一人ではないと、存在を主張するかのように。

 フリジアはそれにとても助けられていた。

 最初のうちは首を縦に振ったり横に振ったりするなどのジェスチャーでしか答えられなかったが、日を増すごとに彼女の口数も多くなっていく。

「おはよう、セヌ……」

 こうしてフリジアはよほどのことがない限りずっとそばにいる侍女と、ゆっくり交流を深めていた。
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