聖女のいない国に、祝福は訪れない
(もう二度と、傷つきたくないから……)

 嫌いと言われようが愛の告白をされようが、彼女が人間として生きることを望むのならば。
 セドリックを頼り彼に庇護されながら生きていくしかない。
 ただ癒やしの力を使えるだけのか弱い女に、選択肢など最初から存在しなかったのだから……。

「生きる意味に理由など必要ないと思うが。俺が君を愛していることだけは、忘れないでくれ」

 彼はそう言い残すと、フリジアの与えられた部屋から出て行ってしまった。

(彼は私と、どうなりたいのだろう……)

 セドリックの去りゆく背中をじっと見つめていた彼女は、長い間答えの出ない迷路から抜け出そうと必死になり、自由な時間の殆どを彼のことだけ考えて過ごした。
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