聖女のいない国に、祝福は訪れない
 ――セドリックに告白された。

 それはフリジアにとって、青天の霹靂だった。

 恋愛感情と言うものは彼女にとって、悪い思い出しかない。

『私は君を愛しているのだから、そなたも私に好意を抱くべきだ』

 愛した分だけ好意を返すように強要されたフリジアは、結局最後までフェドクガを好きにはなれなかった。

『そなたを愛した私が馬鹿だった』

 目を閉じれば真の聖女と身分を騙る双子の妹、ニセラを愛おしそうに抱きしめながらフリジアを蔑む男の姿が、彼女の心を蝕んでいる。

(私は愛してなんて、頼んでいなかったのに)

 フリジアが虐げれば虐げられるほど、空からは大粒の雨が降り注ぐ。

 彼女がムガルデンの暮らしをずっと続けていたいと思えば思うほど、幸せになる権利などないと言うように。
 意識を失えば、悪夢に魘される。

「助けて……っ」

 牢獄の中で捕らえられていたフリジアがどれほど叫んでも、誰にも助けてもらえなかった。
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