聖女のいない国に、祝福は訪れない
(私はずっと、誰かに助けを求めた手を掴んでほしかった……)

 荒れ狂う心が段々と、落ち着きを取り戻していく。
 先程まで苦痛を抱いていたのが嘘のように冷静さを取り戻したフリジアは、セドリックをじっと見つめた。

(陛下は言葉にしなくても。私が一番ほしいものをくれる……)

 フリジアのすべてを奪おうとしたフェドクガとは、大違いだ。

(まるでここは、楽園のよう……)

 こんな素敵な国があるなら。
 もっと早くに崖から身を投げて、彼の元へと逃げてくればよかった。

(ここに居たい……)

 フリジアは繋いだ指先が離れないように握り返すと、瞳を潤ませて懇願した。

「離さないで……。ずっと、そばにいてください……」
「ああ。君が望む限り、君のそばを離れないと誓おう」

 彼女は彼の言葉を耳にすると、ゆっくりと目を閉じ再び眠りについた。
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