聖女のいない国に、祝福は訪れない
「毎晩、魘されているようだな」
「……どうして、それを……」
「セヌから聞いた」

 ――気まずく長い沈黙のあと、話を振ってきたのはセドリックだった。
 フリジアはまさかその件を指摘されるとは思わず、唇を噛み締め耐え忍ぶ。

 この話題になると、どうしても憎きフェドクガの姿が目に浮かんでしまうから……。

「俺がいると、落ち着くそうだ」

 フリジアは自身の胸に問いかけた。

 朧気な記憶ではあるが、彼と手を繋いでからはどんよりと沈んでいた気持ちが、ポカポカと暖かなオーラに包まれている。

「……そう、みたいです……」

 悪夢を見ることなく。
 ぐっすりと睡眠を貪れたと言うことは、彼の言葉に嘘や偽りはないのだろう。

「素直でよろしい」

 フリジアが認めれば、彼は嬉しそうに優しく微笑んだ。

(必要以上に警戒する意味は、ないのかもしれない……)

 そう考えを改めたフリジアが、恐る恐る彼と繋いだ指先を握り返そうとした直後のことだった。

「今後は、ともに寝るか」

 彼から想像もつかない誘いを受けたフリジアは、気まずそうに視線を逸らすと遠回しの拒絶をする。
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