聖女のいない国に、祝福は訪れない
「陛下が眠っている間に、危害を加えるかもしれません……」
「問題ない」
セドリックはフリジアに愛を囁いているが、本当に心のそこから好意を抱いているのかは怪しいものだ。
彼女はまだ、彼に絶対的な信頼をおけるほど彼の人となりをよく理解していなかった。それは、セドリックだって同じこと。
「今この場で寝首を掻かれたとしても、俺には生き残る自信がある」
「それは……何度も戦争で勝利を収めた、悪逆皇帝だからですか……」
「ああ」
だからこその提案だったのだが、腕っぷしに自信のある彼にはなんの意味もなさない会話であったらしい。
「陛下はもっと、警戒心を持つべきです……」
「……リリエル公爵令嬢は、警戒し過ぎだな」
フリジアが不貞腐れたようにか細い声で告げれば、セドリックが困ったように相槌を返す。
「母国でどれほど、酷い目に合ったのか」
「恐ろしい目になど……」
「今すぐ全てを、包み隠さずに俺へ話してほしいとは言わない。だがな。よく聞いてほしい」
歩み寄りたいセドリックと、遠ざけたいフリジア。
二人の間に不穏な空気が流れる中、彼は低い声で彼女に告げた。
「問題ない」
セドリックはフリジアに愛を囁いているが、本当に心のそこから好意を抱いているのかは怪しいものだ。
彼女はまだ、彼に絶対的な信頼をおけるほど彼の人となりをよく理解していなかった。それは、セドリックだって同じこと。
「今この場で寝首を掻かれたとしても、俺には生き残る自信がある」
「それは……何度も戦争で勝利を収めた、悪逆皇帝だからですか……」
「ああ」
だからこその提案だったのだが、腕っぷしに自信のある彼にはなんの意味もなさない会話であったらしい。
「陛下はもっと、警戒心を持つべきです……」
「……リリエル公爵令嬢は、警戒し過ぎだな」
フリジアが不貞腐れたようにか細い声で告げれば、セドリックが困ったように相槌を返す。
「母国でどれほど、酷い目に合ったのか」
「恐ろしい目になど……」
「今すぐ全てを、包み隠さずに俺へ話してほしいとは言わない。だがな。よく聞いてほしい」
歩み寄りたいセドリックと、遠ざけたいフリジア。
二人の間に不穏な空気が流れる中、彼は低い声で彼女に告げた。