聖女のいない国に、祝福は訪れない
「聖女は生きとし生けるものに愛される女王だ。彼女に危害を与えるものは、獣の餌になる。それも、有名な話のはずだが」
「……そう、なのですか……」

 初めて知ったフリジアは、しょんぼりと肩を落とす。
 聖女として生まれたはずなのに、なんの知識も存在しないことを恥じているのだ。

「君の生まれ故郷を、悪く言いたくはないが……。ムガルデンの評判は、最悪だ」

 セドリックは、固く重苦しい口調で語る。

『命さえ繋がっていれば、癒やしの力で聖女様が助けてくださる!』

 生き残りさえすれば、フリジアが癒やしの力で傷を治してくれるのだ。
 人々は自らを律し鍛えることを辞め、いつしか傷つくことすら厭わなくなった。

「騎士とは名ばかりの、特攻隊員ばかりだ。真正面から正々堂々、剣をぶつけ合う気にもならん」

 ――何もかもが聖女頼り。

 彼女は彼と厶ガルデンに対する評価が一致していることに対して、ほっと胸を撫で下ろした。
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