聖女のいない国に、祝福は訪れない
「私のせい、なのですね……」
「違う。母が亡くなったから、君が生まれたんだ」

 その話を耳にしたフリジアは今にも泣き出しそうなほど悲しそうな瞳をすると、じっと視線を下に落とす。

(私が厶ガルデン王国に生まれたのは、先代聖女の出身国がアーデンフォルカ帝国だったから……)

 国同士の公平性を守るため、次代の聖女は先代と異なる地に生を受ける。

(先代聖女が、厶ガルデン王国に生まれていれば……。私はアーデンフォルカ帝国で、幸せに暮らしていたの……?)

 フリジアは邪な気持ちを一瞬抱きかけ、その気持ちをすぐに打ち消した。

 すると、彼女の視線から考えていることを読み取ったのだろう。
 セドリックは、彼女に素直な気持ちを告げた。

「先代の聖女と同じ国に、暮らしてはならないと言う決まりはない」
「それは……」
「俺はもっと早く、ムガルデン王国から君を連れ出すべきだったと後悔している」

 後ろめたいことがなければ、セドリックに黙っている理由がない。
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