聖女のいない国に、祝福は訪れない
彼女が唇を噛み締め過去のことを率先して話そうとしない姿を目にした彼は、フリジアが受けた不当な扱いを口にせずとも気づいているのだろう。
「こうして君と面と向かって話し、触れ合えるようになって……本当によかった」
セドリックは心の底から、フリジアに会えたことに喜びを隠しきれないようだ。
彼女は彼の好意を拒絶することも、受け止めることもできず――ただ固まっているしかない。
「もう二度と、繋いだこの手は離さない」
フリジアの手に自らの指先を絡めたセドリックは、離れないように強くその手を握りしめた。
(陛下にとって私は、守れなかったお母様の代わりなのかもしれない……)
憂鬱な気持ちでいっぱいのフリジアの心を、表すかのように。
窓の外へ視線を移せば、いつの間にか大雨が小雨に変化していることに気づく。
(どうしてこんなにも、胸が痛むの……?)
彼と繋いだ指先からひんやりと伝わる手の感覚は、フリジアが一人ではないと勇気づけているはずなのに――。
セドリックの母が先代の聖女だと聞かされた彼女は、浮かない顔でゆっくりと目を閉じた。
「こうして君と面と向かって話し、触れ合えるようになって……本当によかった」
セドリックは心の底から、フリジアに会えたことに喜びを隠しきれないようだ。
彼女は彼の好意を拒絶することも、受け止めることもできず――ただ固まっているしかない。
「もう二度と、繋いだこの手は離さない」
フリジアの手に自らの指先を絡めたセドリックは、離れないように強くその手を握りしめた。
(陛下にとって私は、守れなかったお母様の代わりなのかもしれない……)
憂鬱な気持ちでいっぱいのフリジアの心を、表すかのように。
窓の外へ視線を移せば、いつの間にか大雨が小雨に変化していることに気づく。
(どうしてこんなにも、胸が痛むの……?)
彼と繋いだ指先からひんやりと伝わる手の感覚は、フリジアが一人ではないと勇気づけているはずなのに――。
セドリックの母が先代の聖女だと聞かされた彼女は、浮かない顔でゆっくりと目を閉じた。