聖女のいない国に、祝福は訪れない
(長年聖女を虐げてきた罰とでも言うのか……)

 理由がどうであれ、気候が不安定なのは事実だ。
 ムガルデン王国の人々は祈りを捧げ、天気の安定を新たな聖女に願った。

『大丈夫! そのうち、なんとかなりますよぅ!』

 民に懇願されたニセラは明るく元気な声で、その場しのぎの適当な言葉しか口にしないそうだ。

『聖女様! 不治の病に侵された娘を、助けてください……!』
『うーん……。寝てれば、治ると思いますよぅ? ほら。寝る子はよく育つって言うじゃないですかぁ?』

 新たな聖女は癒やしの力で病を直してほしいと民から懇願されても、絶対にその力を使おうとはしなかった。
 フリジアは望まれれば、誰に対しても分け隔てなく。
 率先して彼らに祈りを捧げたと言うのに……。

 これに癒やしの力を受け取ったことのある人間達は不快感を表し、内部分裂を起こした。

『聖女様を返せ』
『彼女こそが真の聖女だ!』

 フリジアを聖女だと信じる者は、徐々にその数を減らしていく。
 派手な行動をした民達は、自国の騎士達により治安維持のためと称して彼らの命を奪われてしまったからだ。
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