聖女のいない国に、祝福は訪れない
(すでにフリジアを保護しているとは、口が裂けても言えんな……)

 彼らが本当にフリジアを、真の聖女だと思っているかすらも怪しいのだ。
 この状況で彼女が無事であると伝えるわけも行かず、セドリックは彼らを保護することにした。

(荒廃した地に花が芽吹き、作物がなんの苦労もなく育てば――どうせ隠しきれなくなる)

 アーデンフォルカ帝国に暮らす人々は、先代の聖女が存命であった頃の豊かな帝国の状況を覚えているものも多い。
 セドリックが隠そうとしても、大地に変化があればすぐに再び聖女が根ざしたとわかってしまう。

 ――だからこそ。

 それまでは王城の人々と協力し、フリジアがここに匿われていることを公にしないと決めた。

 セドリックは願っている。
 いつかフリジアが彼だけを愛し、この帝国に来てよかったと笑顔で口にする姿が見られることを。

 その時初めて、ムガルデンで真の聖女とやらを崇める民達は自らの愚かさに気づくだろう。

 神の愛し子をこき使い、彼女を慈しめなかった罪は重く。
 聖女に見捨てられた国は、滅びを約束されるのだと――。
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