聖女のいない国に、祝福は訪れない
「お心遣い、感謝いたします」

 自由を奪ったことに対して謝罪を受けるなど、フリジアにとっては初めてのことだった。

 聖女は王に管理されるもの。
 フリジアはいつだって、フェドクガの操り人形だった。
 勝手なことは許されない。
 癒やしの力を使い終えれば、すぐに四肢を拘束されて視界を奪われ、来たるべき時が来るまで監禁されていたのだから。

 それに比べれば、王城内だけと言う条件付きではあるが――外出を許されたのは大きな進歩だ。

「王城で暮らす人々は、君に危害を加えるようなことはないだろうが……。会話を試みるのであれば、あまり真に受けるな」
「はい」

 セドリックはフリジアに不穏な言葉を残すと、仕事があると言って去っていく。

(今の発言は、どう言う意味……?)

 フリジアはその理由を確かめるため、セヌを伴いさっそく王城を散策すると決めた。
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