聖女のいない国に、祝福は訪れない
「陛下の婚約者様!」
「お散歩ですか?」
「い、え……。大きな声がしたので……」
「ご心配をお掛けし、申し訳ありません。今、手が塞がっておりまして」
「そうですね! 陛下の愛しき人のお手を煩わせるような問題ではございませんので!」

 彼らは口々に、フリジアを目の前の問題から遠ざけようとしてくる。
 彼女はここで引き下がるわけには行かないと、必死に食い下がった。

「治る見込みのない感染病とは、聖女の持つ癒やしの力でしか治せぬものに違いはありませんか」
「フリジア様……!」

 フリジアが本題に入ろうとすれば、それ以上は首を突っ込むなと彼女のあとを追いかけてきたセヌが名を呼ぶことで阻止する。

(このまま言いくるめられたら。ここに来た意味がない……)

 しかし彼女は絶対に、引くつもりはなかった。
 フリジアを止めようとしていたセヌに首を振ると、落ち着いた声で侍女に諭す。
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