聖女のいない国に、祝福は訪れない
「聖女様バンザイ!」

 病から回復した人々はフリジアの前に跪き、拝み倒す。

『聖女様! 私も!』
『弟を助けてください!』

 一度こうなると、騒ぎを聞きつけた人々が引っきりなしに癒やしの力を懇願してくる姿を思い浮かべたフリジアは、顔を真っ青にしながらその場に無言で佇んでいたが――。

「ありがとうございます、聖女様!」
「我々は聖女様を守る、剣や盾となりましょう!」
「どこへでもお供いたします!」

 思っていたような惨状が目の前で繰り広げられることはなく、重篤な状態から回復した騎士達に忠誠を誓われた。

 これに驚いた彼女が二の句を紡げないでいると、そばに控えていたセドリックが再び彼女を抱き上げた。

「これより聖女が、流行り病の根絶に取り掛かる。治療を終えた者達は撤収作業を」
「はっ!」
「リエルル公爵令嬢の忠誠心は、いずれ別の場所で示してもらう」
「承知いたしました!」

 フリジアがどう反応していいかわからず口籠っている間に、機転を利かせたセドリックが騎士達へ今後の流れを説明した。
 彼らはあっと言う間にキビキビと動き出し、テキパキと作業を始める。
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