聖女のいない国に、祝福は訪れない
(よく統制のとれた騎士団だ……)

 彼女はその様子を、物珍しそうに見つめていた。

 ここがムガルデン王国であれば、フェドクガはフリジアを庇う素振りなど見せなかっただろう。
 むしろ、彼らが望むまま一晩中癒やしの力を使えと強要したかもしれない。

(陛下は騎達から、信頼されているのね……)

 それからフリジアは、重症度の高い順に四つのバンガローをセドリックに抱きかかえられたまま巡った。

 彼女が癒やしの力を使っても、騎士達はお礼を告げるばかりで、家族を治してほしいとか、病以外の治療を求めることはない。

(誰一人、自らの欲望を叶えようともしない……)

 ずっと自身が異常な考えを持つ国で癒やしの聖女として活動することを強要されていたと実感したフリジアは、彼らのように素直な人達ならば、何度だって人々のために力を発揮したいと思えるようになっていた。
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