聖女のいない国に、祝福は訪れない
『聖女様はやはり、本物だ!』
『癒やしの力が使える!』
『聖女様、生涯私達を見守りください!』

 フェドクガの監視下に置かれていたフリジアは、身分を隠して困っている人々の役に立つ。
 けれど、癒やしの力を使えばすぐに、彼女が聖女であることはバレてしまう。

『なぜ勝手なことばかりするのだ!』

 フリジアが一人王城を抜け出し、民のためにと聖女として奮闘している話が彼の耳に入ったのだろう。

 彼女が正しき聖女としてあろうとすればするほど、フェドクガは激昂する。

 激怒した男はフリジアが自らの意思で行動しないように、躾と称してさまざまな罰を与えた。

『貴様は私達の命令通りに、民の要望に応えればいいのだ!』

 最初に民から望まれるがままに聖女の力を使えと言ったのは、彼だったはずなのに――。

(どうして……?)

 私利私欲のために聖女の力を利用しようとしたフェドクガは、段々と彼女の自由を奪っていく。
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