聖女のいない国に、祝福は訪れない
「病に罹患した患者は、これで全てか」
「はい……。念の為、ともに行動した人々にも浄化を行います」
「立て続けに癒やしの力を使っているだろう。体調は、大丈夫なのか」
「……はい。人数が、少なかったので……」

 フリジアは一度に三十人程度であれば、癒やしの力を使って治療を行える。

 聖女として神に祈りを捧げることは、かなりの体力や気力を消耗されることはあまり知られていなかったのだが――。

(お母様が、先代の聖女だったから……?)

 セドリックはフリジアよりもずっと、博識だ。

『体調が悪い? 知ったことか! 癒やしの力を使えぬ聖女など、なんの価値もない!』

 フェドクガからは意識が朦朧としている状況でも癒やしの力を使えと強要されていた彼女は、セドリックが体調を労る言葉をかけてくれるだけで充分救われていた。

「陛下!?」
「これより聖女が、君達に祝福を授ける」
「こ、ここは不要です! 誰も流行り病には罹っておりません!」
「君達の言葉を信じて宿舎へ戻ったあと、感染が爆発したらどうなると思う」
「し、しかし……!」
「何をそんなに怯えている。木の陰に隠れて、こっそりと我が領地に病を蔓延させたがっているものでもいるのか」
「い、いえ……!」

 真っ青な顔でブルブルと怯える騎士は、セドリックではなくフリジアを見つめている。
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