聖女のいない国に、祝福は訪れない
「私は陛下に、迷惑をかけてばかりですね……」
「君のおかげで、百五十名の命が助かったのは確かだ。気に病む必要などない」
「ですが……。こうして忙しい陛下のお手を、煩わせてしまいました……。それは褒められたことでは、ありません……」
「君と言葉を交わし触れ合うことも、無駄な時間も大事な仕事の一環だ」

 視線を落として反省するフリジアに、セドリックは彼女を安心させるように優しい言葉をかけた。

「君が迷惑だと感じているのならば、控えるが……」
「いいえ……! 陛下から気にかけて頂けるなど、大変光栄です……。一人は寂しいですし、恐ろしいので……」

 フリジアはあえて本心を口にしなかった。彼のことを信じてみようとは決めたが、素直に打ち明けたあと。
 彼女の弱みが悪用されては困るからだ。

「そうだな。俺も、同じ気持ちだ……」

 彼はどこか遠い目をすると、フリジアの緊張を解くために昔話をする。
 それはセドリックが、側近にさえも伝えたことのない願望だった。
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