聖女のいない国に、祝福は訪れない
「チュピピ!」

 頭上からバサバサと真っ白な羽根をはためかせ、鳥達がフリジアを囲んだからだ。

「フリジア様!」

 これには彼女も驚き、固まることしかできない。
 鳥達の一部は頭の上や肩に乗り、愉快な鳴き声を上げている。
 彼らにはどう見ても、敵意はないように見えた。

「待ってください……!」
「しかし……!」
「……本で、読んだことがあります……。聖女は動物に、好かれやすいと……」
「チュピピ?」

 それにしたって、あまりにも数が多すぎる。
 セヌは鳥の大群達を前に短剣を持ち、いつでも彼らの命を屠る準備を終えていた。

(どうしたら、信用してもらえるかしら……?)

 頭上ではいまだにバサバサと、大きな音を立てて鳥の大群が飛び回っているのも気がかりだ。
 王城を守るために矢で鳥達を射るようなことになれば、血の雨が振る。

「空で飛んでいる子達は、地上で羽根を休めるか……。毎日少しずつ、遊びに来て頂けると助かるのですが……」
「チュピ!」

 フリジアは頭の上に乗っていた小鳥を見上げながら声をかける。
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