聖女のいない国に、祝福は訪れない
(何を伝えたいのか、全然わからない……)

「あなた達は、どこから来たの……?」
「チューピ!」

 鳥はビシッと翼を広げると、右側に向かって勢いよく動かした。
 東のムガルデン王国、西のアーデンフォルカ帝国と言うのは、有名な話だ。

「そう……」

 母国の名前を出したくなかった彼女は、暗い顔で深く追求することなく納得した。

「あんなに遠くから、遥々やってくるなんて……ご苦労さま……」
「チュピ!」
「花畑にいる子達は、疲れてしまったの……?」
「ピュールルルッ」

 今までとは異なる鳴き声を上げたことに驚いたフリジアがあたりを見渡せば、花畑で翼を休めていた鳥達が一斉に中庭の入り口まで羽ばたいていく。

 もの凄い勢いで翼をはためかせる鳥の大群を目にしたフリジアが目を丸くすれば、男性の怒声が聞こえてきた。

「何事だ!」
「ピュールルゥ!」
「――セイントバード?」
「うわぁ!」
「やめろ!」

 そこには数名の護衛騎士とセドリックがいた。
 主に襲いかかる鳥の大群を退ける騎士へ大声で叱咤した彼は、甘んじてセイントバードが全身に集るのを受け入れる。
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