聖女のいない国に、祝福は訪れない
「お忙しい中、私のような存在にお時間を頂戴してしまい……」
「肩苦しい挨拶は不要だ。それに俺は、迷惑などとは思っていない」
「ですが……」
「あと数時間もすれば、君の誕生日だな」
「はい……」
「明日は忙しくなる。母上の追悼式、獣達の受け入れ、そしてリエルル公爵令嬢の誕生日会……」
「……私の誕生日を……祝うのですか……?」
「そうだが。何か問題でも?」

 セドリックの言葉を耳にしたフリジアは、コクリと何度も頷こうとして慌てて首を縦に振るのをやめた。
 ハミングバードが頭上で寝ていることを思い出したからだ。

「お心遣いだけで、充分ですから……」
「皆、聖女の誕生を祝いたがっている」
「先代聖女を偲ぶことだけを考えなければ……罰が当たります……」
「心配するな。母上は、化けて出るようなタイプではない」
「神の化身が遣わされるかもしれません……」
「次代聖女の誕生を祝うことすら罪と言うような神から、祝福を受ける気にもならんな」
「陛下……」

 神に対する不敬は、聖女の存在を否定しているようなものだ。

 フリジアが彼を咎めるように言葉を紡ぐと、セドリックは真っ直ぐな目で彼女に問いかけた。
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