聖女のいない国に、祝福は訪れない
「気負う必要はない。君が先代聖女のためを思って手に取った色なら、母上はきっと喜ぶ」
「そう、でしょうか……」
「ああ。次代の聖女と面と向かって会話できないのが、残念だと言うくらいだからな……」

 昔を懐かしむような瞳でポツリと溢したセドリックの話を耳にして、彼女は疑問に思う。

(この話は、本当なのか……)

 落ち込んでいるフリジアを勇気づけるためについた嘘の可能性もあると警戒したが、それを指摘するのはデリカシーに欠ける。

(死者の言葉を疑うなど、冒涜でしかない……)

 彼女は早く眠ってほしそうにしている彼の反応に応え、渋々目を瞑った。

(過去視の力があれば、よかったのに……)

 生前の先代聖女がどんな風に息子であるセドリックと接していたのか。
 この目で見れたらよかったのにと叶わぬ夢を思い描きながら、フリジアは意識を失った。
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