聖女のいない国に、祝福は訪れない
 ――朝目覚めると、手を握り締めて添い寝をしていたはずのセドリックは姿を消していた。

(忙しい人だから……私に付きっ切りでいられるはずがない……)

 フリジアはそれを残念に思いながら、セヌの運んできた朝食を口にしてから身支度を行う。

「本日は陛下より、こちらのドレスを身に纏うようにと仰せつかっております」

 セドリックがフリジアのために用意したドレスは、深海を連想させる群青色のものだ。
 聖女は白を纏うと言う硬っ苦しいしきたりをぶち壊すような人とは思えず、彼女は目を丸くした。

「これを、本当に陛下が……」
「はい。十八歳の誕生日。先代聖女は旦那様からプレゼントされた真紅のドレスに身を包んでおりました」
「……私のイメージカラーは、青なのでしょうか……」
「……恐らくは」

 ブローチから髪飾りに至るまで、青色のフリージアが象られていると気づいた彼女は、難しい顔でそれをじっと見つめる。
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