聖女のいない国に、祝福は訪れない
(陛下がどうしても、と言うなら考える……。でも、今は……)
自らの意志で純白を纏い、その姿をセドリックが気に入ったらどうすればいいのかわからない。
フリジアは黒の方がよほどマシだと決意を新たにすると、セヌへ喪服を着せるように命じた。
「これだけは……。譲れません……」
「――承知いたしました」
主がそう望むのであればと、深くは追求せずに侍女はフリジアに喪服を着せてくれる。
「ピィ……?」
頭上からは不穏な空気を悟って目が醒めたのか、ハミングバードが不思議そうな鳴き声を上げた。
鳥が頭の上に乗っていることをすっかり忘れていたフリジアは優しく微笑むと、落ち着かせるように羽根を撫でる。
「私は、大丈夫……」
「ピィイ!」
ハミングバードは「困ったことがあればいつでも頼って!」とでも言いたそうに右翼を勢いよく掲げると、鳴き声を上げることなく大人しくなった。
「わがままを言って、ごめんなさい……」
「……いいえ。この程度のことでしたら、問題ございません。そろそろ陛下が迎えに来る時間かと思われますが……」
「……先に、出ます……」
「ピィルィ!」
カラカラと窓を開放すれば、心地いい風がフリジアとハミングバードを撫でる。「お外だ!」と嬉しそうな鳴き声を上げる頭上の鳥が「早く行こう!」と嘴で頭をコツコツと叩いているのを感じながら。
「――着替えろと、言われたくないの……」
彼女はひらりと身を乗り出して外に出ると、中庭を目指した。
自らの意志で純白を纏い、その姿をセドリックが気に入ったらどうすればいいのかわからない。
フリジアは黒の方がよほどマシだと決意を新たにすると、セヌへ喪服を着せるように命じた。
「これだけは……。譲れません……」
「――承知いたしました」
主がそう望むのであればと、深くは追求せずに侍女はフリジアに喪服を着せてくれる。
「ピィ……?」
頭上からは不穏な空気を悟って目が醒めたのか、ハミングバードが不思議そうな鳴き声を上げた。
鳥が頭の上に乗っていることをすっかり忘れていたフリジアは優しく微笑むと、落ち着かせるように羽根を撫でる。
「私は、大丈夫……」
「ピィイ!」
ハミングバードは「困ったことがあればいつでも頼って!」とでも言いたそうに右翼を勢いよく掲げると、鳴き声を上げることなく大人しくなった。
「わがままを言って、ごめんなさい……」
「……いいえ。この程度のことでしたら、問題ございません。そろそろ陛下が迎えに来る時間かと思われますが……」
「……先に、出ます……」
「ピィルィ!」
カラカラと窓を開放すれば、心地いい風がフリジアとハミングバードを撫でる。「お外だ!」と嬉しそうな鳴き声を上げる頭上の鳥が「早く行こう!」と嘴で頭をコツコツと叩いているのを感じながら。
「――着替えろと、言われたくないの……」
彼女はひらりと身を乗り出して外に出ると、中庭を目指した。