美貌の公爵令嬢フェリシアは騎士様が好き
「アラン様、行きますわよ!」
「うわっ!フェリシア様、やりすぎですって!ははは。」
 
 2人は花に水をやりながら水遊びを始めてしまい、水を掛け合って喜んでいる。マリーとオルタンスは、そんな2人の様子を静かに見つめていた。

「オルタンス、平和ですね。」
「こんな日が来るとは思いませんでした。」

 フェリシアの護衛はゼロ部隊の元隊員である2人からしても過酷だった。それ以上にフェリシアが自由に生活できないことが苦しかった。しかしアランが来てからフェリシアは普通に生活ができるようになった。マリーとオルタンスは、はしゃいでいる2人を見つめながら目頭を押さえた。

「フェリシア様、そろそろ中に入りませんか?」
「濡れてしまったので着替えないといけませんわね。」
「そうですね。マリーさんたちと部屋に戻っていてください。私も着替えてきます。」

 歩き出そうとするアランの手をフェリシアは握りしめた。

「アラン様は私の護衛なのですよ!私から離れるのですか!?」
「このままフェリシア様の部屋に行くわけにはいきませんから。」
「私が着替えさせて差し上げますっ!」
「え……」

 フェリシアはアランの腕を掴んで歩き出した。フェリシアを振り解くわけにもいかず、アランは結局フェリシアの部屋に戻ってきた。

「アラン様、着替えましょう?」
「フェリシア様のお着替えが先です。早く着替えないと風邪を引いてしまいます。」
「では着替えさせてください。」
「それはできません。お着替えの手伝いはメイドの仕事です。」

「……確かにそうかもしれませんわ。では、マリーに頼みます。」
「そうしてください。」
「着替えたらすぐ来てくださいね。」
「わかりました。」

 アランはフェリシアの部屋を出ると、隣の部屋の扉を開けた。最果ての地にあったフェリシアの部屋は、侵入者がいなくなったため今では庭園を見下ろせる明るい場所に移動された。それに伴ってフェリシアの隣にアランの部屋が設けられていた。

「すごい部屋だなぁ……」

 アランは自分の部屋に入ると部屋の中を見回した。広くて豪華な部屋にはまだ慣れない。アランは手早く着替えを済ませてベッドに横たわった。
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