【完結】アシュリンと魔法の絵本
1章:アシュリンの旅立ち。
アシュリンの旅立ち。 1話
静かな森の中に、小さな村がある。
木々の緑に囲まれた、自然豊かな場所だ。
……自然しかない、と言ってもいいかもしれない。
そんな村の一角に、大きな家がある。そこにはフォーサイス家が暮らしていた。
「アシュリン、今日は窓を拭いておくれ」
「はぁーい」
大きなバケツの中に雑巾を入れて、「よいしょ」と気合を入れて持ち上げる。
レディシュの背中まである髪を、二つにわけて三つ編みにし、青と緑色のミックスカラーの目で窓を見上げるのはアシュリンと呼ばれた少女だ。
水をこぼさないようにゆっくりと歩いていく。今日は曇りだから、窓の汚れが良くわかる。
バケツを床に置いて、雑巾をぎゅっとしぼってから、アシュリンは窓を拭き始めた。ごしごしと拭いていると、生まれたときから一緒にいる黒猫――使い魔のノワールが声をかけてきた。
「どうして人間は魔法でそうじしないの?」
「なんでだろうねぇ? 魔法をつかったほうが、はやいのに」
「ねー」
この世界――エルピスに暮らす人々は、魔法が使える。水を出したり火を出したりと生活に欠かせない魔法が誰でも使えるのだが――フォーサイス家の教育方針で、魔法をあまり使わず生活している。
ごしごしと窓を拭き続け、ピカピカになると風の魔法を使って乾かす。
なぜか乾かすときだけは、魔法を使ってもいいルールなのだ。
木々の緑に囲まれた、自然豊かな場所だ。
……自然しかない、と言ってもいいかもしれない。
そんな村の一角に、大きな家がある。そこにはフォーサイス家が暮らしていた。
「アシュリン、今日は窓を拭いておくれ」
「はぁーい」
大きなバケツの中に雑巾を入れて、「よいしょ」と気合を入れて持ち上げる。
レディシュの背中まである髪を、二つにわけて三つ編みにし、青と緑色のミックスカラーの目で窓を見上げるのはアシュリンと呼ばれた少女だ。
水をこぼさないようにゆっくりと歩いていく。今日は曇りだから、窓の汚れが良くわかる。
バケツを床に置いて、雑巾をぎゅっとしぼってから、アシュリンは窓を拭き始めた。ごしごしと拭いていると、生まれたときから一緒にいる黒猫――使い魔のノワールが声をかけてきた。
「どうして人間は魔法でそうじしないの?」
「なんでだろうねぇ? 魔法をつかったほうが、はやいのに」
「ねー」
この世界――エルピスに暮らす人々は、魔法が使える。水を出したり火を出したりと生活に欠かせない魔法が誰でも使えるのだが――フォーサイス家の教育方針で、魔法をあまり使わず生活している。
ごしごしと窓を拭き続け、ピカピカになると風の魔法を使って乾かす。
なぜか乾かすときだけは、魔法を使ってもいいルールなのだ。
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