【完結】アシュリンと魔法の絵本
 使い魔たちは自由に空を飛べるが、大体は主人と一緒に飛んでいる。

「リーリクルに行く道、結構混んでいるね」
「そうだねー。陸路(りくろ)が使えないなら、仕方ないのかな」

 アシュリンは飛んでいるスピードを落として、邪魔にならないように(はじ)に移動した。

 ラルフを呼んで端っこを飛んでいると、急いでいるのかピューンと音がするくらい、いきおいよく飛んでいる人がいて、「こらー! 空の道の速度を守りなさーい!」と空の道を警備(けいび)している人が追いかけている。

「……空の道ってにぎやかだよね」
「……本当にね」

 陸路よりも空の道を通ったほうが、移動は楽だ。

 楽だが、こうしてたまに速度を守らない人がいて、そのたびに警備員が追いかけるというレースが始まってしまうことがある。

「今日はレースの日かぁ」
「なにをそんなに急いでいるんだろうねぇ」

 のんびりと飛んでいるアシュリンとラルフは、やれやれとばかりに両肩を上げて、視線を()わしてくすくすと笑い合った。

 そのうちにスピードを出していた人が警備員につかまり、しょんぼりとしているところを追い()していく。

「みんなが速度を守れば、誰かにぶつかっちゃうこともないよね」

「うん、安全に飛ぶことって大事だね」

 空の道は魔法でできていて、もしもほうきから落ちてもぽよよんとした雲が受け止めてくれる。なので、たまにいるのだ。わざとスピードを出して、飛んでいる人にぶつかり、雲に落とす人が。
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