【完結】アシュリンと魔法の絵本
「あ、ラルフ見て! リーリクルの(みずうみ)が見えるよ!」
「え? ……わぁ、本当に湖? ってくらい大きいね」

 アシュリンに声をかけられて、ラルフは辺りを見渡した。

 キラキラと輝く湖面(こめん)が見えて、遠くからでも美しい光景だと感心したように言葉をこぼす。

「空の上から見るこの景色、わたし好きなんだ! ラルフはどう?」
「どうって……いや、ちょっと待ってね。考えてみる」
「考えることなのー?」

 好きなものをハッキリと告げてくるアシュリンに、少したじろぐラルフ。そして自分では考えたことのない問いをされて、黙り込んでしまった。

 それから数分後、ようやく自分の感情を探し当てたのか、ラルフが口を開く。

「……うん、きれいなところを見るのは、好き……だと思う」
「そっか! どんどんラルフの『好きなもの』が増えていくといいね!」

 アシュリンの屈託(くったく)のない笑顔に、ラルフはさっと彼女から視線をそらす。

 耳まで赤く染まっていることに気付いたルプトゥムが、「主にも春がきたか?」とからかうように声色を(はず)ませたので、ラルフはじろりとにらんだ。

 そんな彼らを見てから、アシュリンはほんの少しだけスピードを出した。もちろん、捕まらない程度のスピードだったが、いきなり距離が離れてしまったことにラルフは慌てて彼女を追いかける。

「どうしたの、アシュリン」
「もうちょっとでおじいちゃんたちに会えると思ったら、ワクワクしてきたの!」
「そっか。……アシュリンは本当に、家族のことが大好きなんだね」
「うん!」

 満開の花のように笑う姿を見て、ラルフはふっと表情をほころばせた。
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