【完結】アシュリンと魔法の絵本
 リビングの窓はとても大きく、湖がよく見えた。そのことにラルフが思わず声を出すと、得意げに笑うアシュリンが胸を張って彼の手を引っ張った。

「おばあちゃん、窓開けても良い?」
「いいよぉ。今、お茶淹れるからねぇ」

 はーい、と元気よく返事をしたアシュリンは、リビングの窓を開けて、こっちだよとラルフを誘う。

「リビングと繋がっているんだ」
「うん、屋根もあるし、椅子もあるし、開放感があって最高でしょ!」
「リビングバルコニーか……。確かに開放感があるし、湖がよく見えるね」

 湖面(こめん)はキラキラと輝き、()んだ青色はラルフの心を和ませてくれた。

「おや、こっちにいたのかい。こっちでお茶を飲まないか?」
「飲むー! ノド、カラカラ!」
「えっと、いただきます」

 ラルフにとって、友だちの祖父母の家にいくことは、なかなか不思議なことだった。

 だからなのか、心がさっきからソワソワしていて、落ち着かない。

 湖を見たことでほんの少しだけ和んだが、慣れないなと小さく息を吐いた。

 リビングに入り、勧められるまま椅子に座るアシュリンとラルフ。

 四人分のカップがテーブルに並び、ラルフが買ったおかしも並んでいた。

「ここのマドレーヌ美味しいのよねぇ。良いセンスだわ、ラルフくん」
「あ、ありがとうございます……」
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