【完結】アシュリンと魔法の絵本
 にこにこと笑いながらマドレーヌを口にするロッティ。お茶を飲むメイソン。

 使い魔のノワールとルプトゥムは、リビングバルコニーで(みずうみ)を眺めて、本はアシュリンの周りをくるくると飛んでいる。

「おばあちゃん、このお茶なんていうの?」
「ハーブティーだよ。アシュリンとラルフくんのには、はちみつを入れてあるよ」
「ハーブティー?」
「ラルフくん、緊張しているだろう? このハーブティーにはリラックス効果があるからね。少しは落ち着くかと思って」

 ラルフは顔を上げてロッティを見た。自分が緊張していることに気付かれていたことに、ほんのりと頬を赤く染めた。

「……ありがとうございます」

 ハーブティーの入ったカップを持ち上げ、口をつける。

 ふわりとバラと甘くスパイシーな香りが鼻腔(びこう)をくすぐり、口内に含むとほんの少しの苦味。しかし、その苦味をカバーするかのようにはちみつの甘さが舌を楽しませた。

「……バラ? と、まだ入っていますよね?」
「正解。ローズレッドを主にして、ラベンダーとローゼル、ローズマリーを合わせているよ」
「おいしいです」
「それはよかった」

 アシュリンもハーブティーを一口飲んでみる。

 ラルフの言うようなことはよくわからなかったが、美味しいお茶だと思ってこくこく飲んだ。

 メイソンはマドレーヌを食べながら、三人の様子を(なが)めて「ふふ」と笑い声をもらす。
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