【完結】アシュリンと魔法の絵本
「どうしたの、おじいちゃん」
「いやぁ、普段は二人きりだからね。アシュリンとラルフくんが一緒だと、家がにぎやかになって良いなぁ、と」
「にぎやかなのはいいことだよね!」

 うんうん、とアシュリンがうなずいて、マドレーヌに手を伸ばす。そこそこ大きめのマドレーヌだったので、一口サイズにちぎって口に運び、カッと目を見開いた。

「おいしい!」
「リーリクルで有名なおかし屋さんのマドレーヌなのよ」

 ラルフは目を丸くした。リーリクルの情報はあまり知らない。湖が有名とだけは知っていたが、さすがにおかし屋さんまでは把握(はあく)していない。

「ラルフ知ってたの?」
「まさか!」
「私たちもあまり食べる機会がないから、うれしいわぁ」

 おいしそうに食べるロッティとアシュリンを見て、ラルフはほっとしたように表情をほころばせた。

「ああ、そうだ。ラルフくんは水着をもっているかな?」
「水着? いいえ、持っていませんが……」
「そうか……では用意しよう」

 さらっと言われて、ラルフはメイソンをじっと見つめてこてんと首をかしげる。

「えっと、なぜでしょうか……?」
「湖を泳ぐつもりではないのかい?」

 アシュリンから水遊びに(さそ)われていたが、てっきり水辺で遊ぶだけで湖の中には入らないと思っていたラルフは、思わず彼女に視線を向けた。
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