【完結】アシュリンと魔法の絵本
 だってアシュリンが知っているラルフは、街道ですやすやと眠ってしまうくらい自分のことに興味がない男の子だ。普通、街道で寝ようとは思わないはずと初めて出会ったときを思い浮かべる。

「それに、ラルフのご両親はいそがしい人って聞いていたよ」

 ぽつりぽつりとアシュリンがラルフのことを話し、自分が思っていることも口にする。

 そうすることで、自分がラルフのことをどう思っているのかが徐々に理解できた。

 始まりは偶然。でも、こうして一緒に旅をすることで親しくなったとはにかみながらロッティに伝えるアシュリンに、ふふっと彼女が笑い声をこぼす。

「アシュリンは、ラルフくんのことを、ずっと見守っていたのねぇ」
「見守っていた……のかなぁ? よくわかんないけど、今のラルフは感情が外に出やすくなったと思う!」
「それは良いことね。子どもは子どもらしく、感情を表に出したほうが良いわ。大人になると、なかなか出せなくなっちゃうからねぇ」

 しみじみとつぶやくロッティに、アシュリンは「え?」と聞き返した。

「泣きたいときに泣いて、笑いたいときに笑う。子どもの特権よ。大人になると、どうしても周りを気にしちゃうからね」

 ロッティの言葉に、アシュリンは今までの自分のことを思い返す。

 昔から、泣きたいときに泣いて、笑いたいときに笑っていたと考え――……

(……あ、でも……)

 エレノアが生まれてからは、あまり泣かなくなったことに気付いた。
< 114 / 141 >

この作品をシェア

pagetop