【完結】アシュリンと魔法の絵本
 ◆◆◆

 それから約三時間後、ようやくポトフが完成した。

 弱火でじっくり煮込んだので、時間がかかったが……家の中に良い香りがただよい、アシュリンのお腹がぐーっと鳴る。

 それと同時に、「ただいま。帰ったぞー」とメイソンの声が聞こえ、遅れて「おじゃまします」とラルフの声も耳に届いた。

「すっごくいい匂いだな! なにを作ったんだ?」
「おかえりなさい。今日はポトフですよ。アシュリンも手伝ってくれたの」
「おお、アシュリンも! それじゃあ今日のごはんはしっかり堪能(たんのう)しないとな!」

 バシバシとラルフの背中を叩くメイソンに、ラルフはどこか諦めたように「そうですね……」と力なく答える。

 どこか疲れたように見えるラルフに、アシュリンは目を(またた)かせて、メイソンを見上げた。

「ねえ、ラルフとっても疲れているみたいだけど、どうしたの?」
「うん? そうか?」
「あなたったら……。二人とも、手洗いうがいをしたら食事にしましょうね」

 メイソンはラルフを見て首をかしげる。それだけでなにかを悟ったのか、ロッティは洗面所に行くように声をかける。

 メイソンの手にはたくさんの買い物袋があり、そのほとんどがラルフのものだろうと小さく笑い、ロッティはメイソンから買い物袋を預かった。

「たくさん買ったんだねぇ」
「張り切っちゃったみたいねぇ」

 アシュリンとロッティは顔を見合わせてくすっと笑い合い、テーブルの上に料理を並べる。

 その日のごはんはとても豪華で――みんなでお腹がパンパンになるまで食べた。
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