【完結】アシュリンと魔法の絵本

 ――そして、翌日。

 アシュリンは目をパチッと開けて、ベッドから起き上がり、カーテンを開けた。

 まぶしいほどの空の青さと(みずうみ)の青さに思わず目を細めるアシュリンに、ノワールが「いつもより早くにゃい?」と彼女の肩に乗る。

「だって今日は水浴びの日だよ! 楽しみで楽しみで!」

 ワクワクとした表情で、窓を開けた。風がアシュリンの髪をなびかせ、くるっと身体を反転させて、魔法のリュックから水着を取り出して手早く着替える。水着の上に服を着て、リビングへ向かう姿を見て、本がぽつりと、

『水遊び楽しみだったんですねぇ』

 言葉をこぼしてアシュリンのあとを追った。

 朝食を()って、ラルフを水遊びに誘う。彼は「用意してくる」と昨日使った部屋に足を進め、すぐに戻ってきた。

 この家から湖まではすぐだ。アシュリンが「はやくはやく!」と急かして、ラルフの手を取って駆け出す。

「それじゃあ、私たちも行きましょうか」
「子どもたちの安全のためにね」

 ロッティとメイソンも一緒に湖まで行き、バッと服を脱いで湖に入ろうとするアシュリンを、ラルフが止めた。

「アシュリン、日焼け止めを()らないと」
「えー?」
「そうよ、アシュリン。日焼け止めは大事よ。ラルフくん、よく知っているわね」
「日焼けは火傷と同じだって、教わったので……。今日は良い天気なので、危ないなと」

 ラルフも日焼け止めを塗っていた。自分では届かない場所はメイソンに塗ってもらっている。

「日に焼けると痛い思いをすることになるからなぁ。良いことを教えてもらっていたんだな」
「……はい」

 褒められてラルフはちょっと恥ずかしそうにはにかんだ。昨日の買い物ですっかりメイソンと仲が良くなったようで、アシュリンはちょっとだけ心の中でムッとした。
< 117 / 141 >

この作品をシェア

pagetop