【完結】アシュリンと魔法の絵本
 もちろん、顔には出していない……はずだ。でも、どうしてラルフとメイソンが仲良くなって、自分がムッとするのだろうと首をかしげる。

「アシュリン?」
「うわぁ、どうしたのっ?」
「ああ、いや、塗り終わったみたいだから、行くのかなって」
「もちろん行くよ! いっぱい遊ぼっ!」

 さっきまでのムッとした感情はどこかに行ったようで、アシュリンはぱぁっと表情を輝かせてラルフの手を取り、湖まで一緒に向かう。

 湖にはアシュリンたちの他にも、いろいろな人たちでにぎわっていた。

「なにして遊ぶ?」
「その前に……アシュリン、この前のことを覚えている?」
「この前?」
「水の精霊から、加護(かご)を受けたでしょ? 試してみない?」

 アシュリンの記憶が一気によみがえる。あの大きな滑り台で会った精霊族のタルコットから受けた加護のことを思い出し、「試してみたい!」と声を上げる。

「うん、じゃあ試してみよう」

 ラルフはアシュリンの言葉に小さくうなずき、辺りをきょろきょろと見渡して、あまり人がいない場所を探す。

「あそこら辺が良いかな?」

 人がまばらになっている場所を指して、そこまで行くことにした。もちろん、ロッティとメイソンに声をかけてから。
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