【完結】アシュリンと魔法の絵本
「そうだね。今度行ったらそうしてみよう」

 一緒に海ではしゃいでいる姿を想像して、アシュリンはきっとすっごく目を輝かせるんだろうなぁと考えていると、それは今もかと考えを改める。

「アシュリンは泳ぐの好き?」
「うん! だってぷかぷか浮いていると、気持ち良いもん!」
「アシュリンはお風呂でもぷかぷか浮いてるにゃ」
「温泉も好きそう」
「温泉は行ったことないなぁ。いつか行ってみたい!」

 その言葉は少し意外だった。ラルフは目を瞬かせ、それからぴっと人差し指を立てる。

「じゃあ、神殿都市の近くに温泉があるから、まずはそこを目指そうよ」
「さんせーいっ!」

 アシュリンが右手を高く上げた。

 ノワールは「どんどん目的地が増えていくにゃあ」と言葉をこぼし、アシュリンの頭の上に乗る。

 ルプトゥムは湖水の冷たさが気に入ったのか、バシャバシャと音を立てて泳いでいて、楽しそうだ。

 たくさん泳いで、遊んで、メイソンとロッティに「そろそろ帰るよー」と声をかけられるまで、アシュリンとラルフは湖で遊んだ。こんなに遊んだことは初めてかもしれないとラルフは思う。

「楽しかった?」
「……うん、アシュリン、ありがとう」
「どういたしまして?」

 ラルフがどうしてアシュリンにお礼を伝えたのか、彼女にはわからなくて首をかしげながらも答えて、メイソンとロッティが待っている湖岸(こがん)までいそいで戻った。
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