【完結】アシュリンと魔法の絵本
「それにしてもこの本、ちょっと分厚くなった?」
「毎日ページが増えていくからね。そのうちわかれるんだって」
「……え?」
『一定のページが埋まれば、一冊の絵本としてポンっと!』

 アシュリンが身振り手振りで教えてくれたが、本の言葉に思わず交互に眺めるラルフ。

「それは楽しみだな」

 ルプトゥムがアシュリンと本にやさしく声をかけ、アシュリンは「うん!」大きくうなずく。いつか、一冊の絵本になったとき、自分の旅がぎゅっと詰まった一冊になると考えると、今からワクワクしてしまう。

「本の内容って、どうなるの?」
『そのままではないですね。そのままだとただの絵日記ですから。ご主人さまが一番大切にしたい思いを主に編集します!』
「本が!?」
『もちろん!』

 本が自分の絵本をプロデュースする、というのはなかなか新鮮に思えたラルフは、アシュリンに「本が編集していいの?」とたずねた。

 キョトンとした表情を浮かべてアシュリンはラルフを見た。こてんと首をかしげるのを目にして、ラルフはもしかして、と言葉をつむぐ。

「えーっと、編集の意味がわからない……?」
「なんかこう、良くすることって聞いた!」

 両手の人差し指で丸を(えが)き、その丸をこねるように手を動かすアシュリンに、ラルフはちらりと本に視線を移した。

 本は楽しそうにくるくると踊っている。
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