【完結】アシュリンと魔法の絵本
 歩いているうちに、休憩スペースにたどりついた。

 休むにはまだ早い時間帯なので、近くの小屋に入って、ラルフは地図を取り出す。

「アシュリン、神殿都市にはどこを進みたい?」
陸路(りくろ)!」

 ぱっと明るい声で答えるアシュリンに、ラルフは地図を見つめる。

「じゃあ、このルートかこのルート。どっちがいいかな?」

 アシュリンは地図をのぞき込み、ラルフの指をじっと見てから「どっちって?」と顔を上げた。

「こっちのルートは、ちょっと大変だけど、近道。逆にこっちは遠回りだけど歩きやすいルート」
「んー……いそいでいるわけじゃないから、のんびりいかない?」

 山奥の村、ピロマで育ったアシュリンにとって、ラルフが最初に()したルートでも問題はない。

 だが、せっかくの旅だ。ゆっくりじっくり楽しんでいきたいと、顔に書いてある。

「そうだね。空の道を通らないなら、こっちのほうが安全だし」
「安全?」
「道が整っているからね」

 もしかしたら馬車に乗れるかも、とラルフが口にしたので、アシュリンは「馬車っ?」とワクワクした表情を浮かべた。

「アシュリンは馬車に乗ったことがないの?」
「うん。どんな感じなんだろうなぁって、ずっと思っていたんだ」
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