【完結】アシュリンと魔法の絵本
 神殿都市はここからでは遠いので、歩いていくとすると何日もかかってしまう。

 空の道を使えばあっという間につくが、それでは旅をしている気分にもならないだろうと考え、ラルフは軽く頬をかいた。

「そっか。じゃあ何回か馬車に乗ってみようか」
「いいの?」
「この旅にルールなんてあるの?」
「ないよ!」

 アシュリンの旅は本の中身を埋めるための旅だ。

 自分が楽しんだこと、見てきた風景、感じたこと。

 そのすべてが本の中に記録されて、やがて絵本になる。

「悪いこと以外はね!」
「それは大事なことだよ。まぁ、アシュリンが悪いことをできるイメージが想像できないけどね」
「ラルフもね」
「悪いことをするつもりもないしね」

 くすくすと笑い合いながら、アシュリンは地図に視線を落とした。

「ねえ、ラルフ。わたし、旅に出る前に家族にこう言われたの」

 ふと真っ白な本と出会った日を思い出して、アシュリンは本をつかんだ。今はもう真っ白ではなく、アシュリンの思い出でページが埋まっている。

「旅をすることで、『たからもの』を手に入れられるって」

 その話をしていたときのおばあちゃん――トレッサはとてもやさしい顔をしていたことを思い出し、アシュリンの心の中がぽかぽかと温かくなった。

「その『たからもの』がなんなのか、なんとなくわかった気がするの!」
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