【完結】アシュリンと魔法の絵本
「ハーブっていろんなこうのうがあるんだって。それを教えるのが、おばあちゃんの仕事なの」
「こうのう……効能か。確かにハーブっていろいろあるしね……」

 感心したようにうなずくラルフに、アシュリンは「でしょ?」と笑った。

 とはいえ、アシュリンはハーブのことに詳しくない。

 ロッティの話を聞いていても、すぐに眠くなってしまうからだ。

「そういうのって、本には記録できないの?」
「え? あ、そういえばどうなんだろう。本ーっ、ちょっと来てーっ」

 アシュリンに呼ばれた本は、シュバッと風を切るように素早く彼女の目の前に現れた。

『お呼びですか、ご主人さま!』
「ちょっとたしかめたいことがあるから、見てもいーい?」
『どうぞ!』

 アシュリンの手におさまった本。パラパラとめくってリーリクルでの思い出のページを探し、見つけ出す。

「えーっと……うーん、書かれていないや」

 本に書かれていたのは、アシュリンがロッティとポトフを作ったところ、湖で水遊びをしたところなどで、ハーブの効能については書かれていない。

「絵本になるからかな。……この世界、いろいろな不思議なことがあるけれど、フォーサイス家の本も不思議だよねぇ」
「そう?」

 こてんとアシュリンは首をかしげる。フォーサイス家の子どもは、成人する前に本に出会い、世界を旅するのが掟だ。
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